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執筆者の写真kimilab

寺子屋での「子ども辞書たほいや」

三重県伊賀市にある「ちょっと変わった寺子屋」こと「大仙寺 寺子屋」。

その寺子屋の中学生向けプログラムとして不定期開催されている「大人の背中」第6弾として、児童用の学習国語辞典を使った「子ども辞書たほいや」のオンライン・プレイ体験会を開催させていただきました!


大仙寺・寺子屋のブログにも記事(「大人の背中 vol.6~横浜国大 石田喜美さんと~」 )をアップしていただいております。


オンラインで開催する場合、そこに集まる方々にお持ちの辞書を持ってきていただく必要があります。

今回プレイ会を開催した「寺子屋」に集まる中学生たちの辞書事情についてお伺いしたところ、「小学校のときに、学校で国語辞典は買っているかも…?」ということだったので、学習用国語辞典を用いてプレイできる「子ども辞書たほいや」をやってみることに。


今回、わたしが使用したのは、皆さまおなじみ、金田一春彦&秀穂監修の『新レインボー小学国語辞典 (改訂第6版)』学研, 2019) です。

2019年に最新版(第6版)が発売されているので、学習用辞書としては、昨年3月に発売された『三省堂例解国語辞典(第7版)』に続いて新しいといえるのではないでしょうか。


「子ども辞書たほいや」の面白いところは、なんといっても、「これ、子ども(小学生)になんて説明したらいいの…!?」という戸惑いが発生するところです。


昨年11月に開催した現職教員の皆さんを対象とした「子ども辞書たほいや」プレイ会のときには、「ぱちんこ」をお題として出したりして、それもなかなか面白かったのですが、今回は、小学生とあまり年齢的には違わない…だけど、身心的な発達にはかなり違いがある中学生を対象にした「子ども辞書たほいや」会でしたので、こんなお題を出してみました。


この日、参加しれたのは、6人の中学生(1~3年生)。

2名1組になって、「本当に辞書にありそうな語釈」を考えてもらいましたが、「えー!」「難しい!」という声がところどころで聞こえてきます。


そんな過程を経て、できあがった、選択肢がこちら。

4つの選択肢をスライドで提示すると、ある参加者から「3番は、違うんじゃないか」という声があがりました。


「どうして?」と聞いてみると、「LGBTの人たちもいるから」と言ったあと、「異性または同性」と表立って書いてしまうことは、辞書としては良くないと判断されるのではないか、という考えを述べてくれました。


たしかに、あえて標識化することによって、理解のない人たちが変に話題にしたり、面白がったりして、クローゼットの人たちがかえって苦しい状況に追い込まれるとは、多々あります。

わたしもそういう状況を目にすることもあったので、あえて「異性または同性」と書いてしまうことは、辞書としては避けるべきことなのでは…と考えるその気持ちはよくわかります。


実際のところ、学研『新レインボー小学国語辞典』で採用されている語釈は「2.」です。

「異性や同性」とはあえて書かず、それでも「ある人に…」と記載することで、「恋」が「異性」間だけに限られるものではない、ということを暗に示しています。


「異性や同性」とあえて記載することが良いことなのか、悪いことなのか。


そのことについて、わたしは答えを持ちません。

きっと、「正解」なんてないのだと思います。


わたしにできることは、「これまでも、辞書に関わる人たちは、あなたのように真剣にこの問題について考えてきましたよ」ということを、伝えることだけだ、と思いました。


そこでこのプレイ会では、この「お題」の最後に、昨年11月に発売されたばかりの『新明解国語辞典(第八版)』(三省堂) に記載されている「恋(こい)」の語釈を示しました。

中学生たちは「重っ!」と言っていましたが、それでも、その「重さ」がどこかに響いているのかな、と思える瞬間でした。



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